東京と奈良との間を揺曳する売れない漫画家。女を奪われ、寺巡りに没頭するマイルドヤンキー。奈良の崩壊を信じ大衆へと喧伝する狂漢。見せかけだけの世界に絶望し、もがき苦しむ航海士。そして、彼を異界へと呼び寄せる謎の存在、ジョー・セント……。「……全部つながってたのに」。ある者は世界を創造し、ある者は次元を越境し、またある者は世界の一端に触れ涙を流す。はぐれ者たちが奈良へと逢着し、「物語」が始まるとき、巨大な円環の中で虚構の皮は剥がれ落ち、圧倒的虚無的現実が白日の下に晒される。巻末に町田康の精到な解説を付して送り出された、世界の空(くう)なることを異様な力学でえぐり出す衝撃的怪作、ここに現成。




