『聲の形』の大今義時の書く新作は、何者かによって世界に実験的に投げ込まれた触れたものを記憶・変身する能力を持つ球体がレッシオオカミのフシになるという、日常の細やかな一面を描いた前作と違ってある種『火の鳥』に通ずる壮大な世界観を掲げている。だが大今義時が繊細な感情表現を捨てたわけではない。極地の集落で帰って来得ない仲間の帰還を信じ気丈にふるまうジョアン、大人になりたがったが村の儀式で生贄に選ばれたマーチ、自己犠牲を払って救った意中の人に本心を気づいてもらえないグーグーといった人物との遭遇・死別が各エピソードで繊細な心情描写を行って描かれる。彼らの死を経てフシは野性を捨て人間味を帯びた一人の青年に成長し、創造されたものとしての自分の役割を自覚し悩むのだ。