まず1巻の表紙がイイ。真っ白で現代的な防護服を纏った医師の姿。鳥の嘴のような奇怪なマスクで片手に杖を持った、ペスト医師の魔術師じみたイメージと対照をなしている。ペストという中世ヨーロッパを蹂躙した病が、現代日本に蘇ったという設定が端的に示されていてグッド。
同時に想起されるのは3・11の原発事故。2巻ではペストが蔓延した地域が閉鎖され、そこの住民は完全に隔離されてしまう。生物的・物理的の差はあれど、世間の人々はペストを放射能同様の「見えない脅威」として恐れ、住民たちを迫害さえする者も出てくる。大きな被害を蒙った地域が、全体の利益のために切り離される悲劇性は3・11以降、我々にとって実感を伴うものであり、主人公とともに己の無力さを噛みしめてしまう。
ところで、舞台の横走市が富士山の麓だからって、渦中の住民たちを富士信仰で癒そうとするのは無茶がありませんか。