夢を見た。まだ幼い僕は母に手を引かれ、日の当たる小径を歩いていた。道端に猫が横たわっているのを見つけて、僕と母は近寄ってみる。猫の体は冷たかった。「しんじゃってるんさ。このこ…」と呟く母に、僕は「どうして?」と尋ねる。すると母は、おそろしく優しい微笑を僕に返した…… 三歳のころの朧気な記憶。あの体験から十年が過ぎた。あの冷たい死の感触を、再び確かめる日が来ようとは。親戚と一緒の山登り。勝ち気で少し意地悪な従兄弟のしげちゃんを、母は崖から突き落とした。無邪気に「どうして?」と尋ねられるはずもなく、僕はその場に立ち尽くす。そして、やはり母は、あの不気味なまでに優しい微笑を浮かべるのだった。
何だ、これは!悪寒すら覚える緊張と、甘美な毒のような母の愛。あまりに妖しさに俺はちびっちゃったよ。