作品のページをめくった時点で、魔術師ギルドなる主人公の心のふる里は崩壊しており、スペクトラルウィザードはただ余生を茫漠と暮らしているだけだ。過去にあった幸せを思い、それがもう起こり得ないことを思い、これ以上悪くならないことを願いながら、かといって新たに奮起する気力もなく……。そういった「喪」の雰囲気が作品に満ちながらも、氏による可愛いキャラクタと無駄のない会話により、空気は陰鬱にはならない。ある種乾いて爽快でもある。スペクトラルウィザードは人形を買う。懐かしの食べ物を食べる。友人を裏切り、一方で友人を助ける。世界を救うことで自分も救おうとする。変わらないものなど何も無い。しかし人生は続き、私たちはまだ生きているのだ。模造クリスタル先生、ありがとう……。