「君は処女か?」見合い相手にそう尋ねる男はブライダル企業の若手社長・針辻真。彼は性欲を異常なまでに嫌悪している。「性欲は人を傷つける。」「性欲は人を狂わせ惑わせる愛の敵。」「私は誇り高き純愛主義者だ!」そう主張する針辻の耳元に幼女が囁く。「本当はエッチなことしか考えてないくせに~♥」彼女の名前はA子。初恋のトラウマと性への恐怖が生んだ針辻の幻覚だ。A子の言葉は呪いのように付きまとい、行く先々で針辻を翻弄する。トイレに公園、女性専用車両、そして最愛の秘書・南雲七海の目の前で。針辻は頭を抱え必死に性欲を否定し続けるも、とうとう限界を迎えてしまう。「もはや俺にはあらゆることが『エロい』か『逆にエロい』としか思えない……。」彼の南雲への愛は「真実」なのか。A子とは何者なのか。呪いの渦に溺れる針辻が辿り着く結論とは。性愛への渇望と憎悪という、誰しもが抱える自己矛盾。キュビズムを思わせる独特の画風と、リリカルな台詞の洪水によってそれを巧みに抉り出す。『十月桜』の中野でいちの意欲作。