癌が再発して、父が怒らなくなった。私がテンション爆上げで機嫌よくしてると怒った父が。私のちょっとした足音に怒っていた父が。私の軽めの猥談に怒っていた父が。機嫌が悪いと何もかもに怒っていた父が。嫌で嫌で......仕方なかったのに――なんだかもう、死んじゃったみたい。
笹山よえ子(24歳、フリーター)は父が嫌いであった。父は癇癪もちで何かとつけて怒り出し、物や家人に暴力をふるった。よえ子は父に対し死んだほうがせいせいするとさえ考えていた。そんな時、父のがんが再発し病状が悪化、寝たきりになり物事に関心を示さなくなってしまう。父の束縛から解放され自由になったよえ子であったが、その生活に強烈な違和感を覚える。人生の不都合の原因は父にあると思っていたのに、何も解決していないではないか。かくてよえ子は家を下着姿で歩き回り、エロいポスターを見せ、病床の周りで踊る。すべては父を怒らせるために。