小学校で同じクラスだった鹿児島さん。どんなときも自分を曲げなかった鹿児島さん。わたしが仲間はずれにした鹿児島さん。だから彼女は、この世界から消えてしまった。初夏、あの出来事を受けとめきれないまま引きこもりがちになった宮島ひかるは、1匹の喋る蚕に出会う。それは告げた。「叶えられるわ すべて」。彼女は答える。「わたしの願いは」……。たしかに、世界は変わった。鹿児島魚子の生きた証はことごとく消え去った。残ったのは、すべてを記憶する自分と、人でも蚕でもない存在に生まれ変わった鹿児島さん、そして願いの代償、つまりは蚕を育てる義務だけ。でも、これはほんとうにわたしの願ったことだったのだろうか? ほそやゆきのが狂気的に繊細な筆致で描き出す、人と、過去と、罪の物語を、生の履歴を持つすべての人へ。