極端な省略が加えられ、しかし却って表情豊かな絵と、人間の存在論に肉薄するストーリーの美しいハーモニー。戯曲『レストー夫人』のクラス上演を巡る課題と解決を描いた表題作の4つのエピソードの裏にあるのは、「わたし」を「わたし」たらしめるものは何か、というテーマ。物語・機械的動作・ことば・パーソナリティ。それぞれのパーツから人間を再構築することを試みたとき、見えてくるものは何だろうか。三島芳治の味のある静謐な絵と、不思議なストーリーは確かに目を奪う。しかしそこで思考停止し、この短編集をただの雰囲気漫画として楽しむだけではあまりにも勿体ない。静かに読もう。そして考えよう。