建築士が耳を澄ませばコンクリート造りの生き物の寝息が聞こえてくるのだろうか。丘の上の戦闘機と青年は、ありふれた夏休みの町に置いて行かれたのだろうか。夢の中の「島」がともだちである少女はその「島」の先にどんな風景を見ているのだろうか。
切り取られた日常と非日常の狭間を、『惑星9の休日』の町田洋が鮮やかに描いた短編集。シンプルな線と陰影から、夏の日の熱気が、真夜中の空気の静かさが、ありありと伝わってくる。穏やかさと緊張が同居している空気感、何気なくも深く余韻を残す言葉選びも素晴らしい。そして光と影で演出されるカタルシス。