小学4年生。転校先に、岡崎さんはいた。車が通れない畑の道を抜けて、舗装されていないガタガタの坂道の横に岡崎さんの家はあった。岡崎さんの家には「自由」があった。私は岡崎さんとつるむようになった——。誰にでもある少年・少女時代、どう語るかは人それぞれだ。山本さほは、岡崎さんと改札で別れた「今」からそれを回顧し、岡崎さんに捧げる漫画を書くことで語るらしい。その語り口は隙だらけで、岡崎さんに捧げるはずの漫画は脱線して少女時代あるあるエッセイと化しつつある。が、その「隙」にこそ、過去への、岡崎さんへの、心の底から湧き出る山本の思いを、息遣いを感じないだろうか? 手彫りの木像のように、完璧ではないがどこか味のある作品。山本と岡崎さんの物語は「今」にどう戻ってくるのだろうか。